【ピラミッド型組織からの脱却】新しい組織のかたちと、その可能性

今、組織のあり方に対する関心が高まっています。
従来のようにトップが指示を出し、現場がそれに従う「ピラミッド型」の構造では、変化の激しい時代に対応しきれないという課題が多くの現場で見られるようになりました。

そうした背景の中で、注目されているのが「新しい組織」という考え方です。
それは単なる制度改革ではなく、個々の専門性や価値観を尊重しながら、柔軟かつ自律的に働くことができる組織モデルです。

たとえば、DAO(分散型自律組織)やティール組織といったモデルでは、上下関係や管理型マネジメントに頼るのではなく、メンバー同士が対等な関係の中で役割を担い、進化し続ける組織が形成されます。

こうした新しい組織モデルは、働く人の多様な価値観を受け入れながら、変化に柔軟に対応し、組織全体の創造性とスピードを高めることを可能にします。

本記事では、この「新しい組織」の具体的な特徴と実践ポイントを解説しながら、これからの時代に求められる組織のあり方を考えていきます。

ティール組織という新しい組織モデル

ティール組織とは?

「ティール組織(Teal Organization)」とは、従来のピラミッド型組織とは異なり、メンバー一人ひとりが自律的に動くことを前提とした組織モデルです。
この概念は、フレデリック・ラルー氏が著書『Reinventing Organizations(邦題:ティール組織)』で提唱し、世界中で注目されるようになりました。

ティール組織の特徴は、単に上司や部下といった役割をなくすことではありません。
個人の価値観や感情、創造性を尊重しながら、組織全体が柔軟かつ自然に進化していく仕組みが特徴です。


3つの主要な特徴

1. セルフマネジメント(Self-Management)

ティール組織では、指示や管理をする「上司」がいなくても、組織がうまく機能するように設計されています。

  • メンバーそれぞれが自分の役割を理解し、自ら意思決定を行う。
  • チーム内での協働や対話を通じて、責任を持って課題に取り組む。
  • リーダーは命令を出すのではなく、環境づくりや支援に徹する。

つまり、全員が「自走する」ことを前提とし、それを可能にする文化や仕組みが整えられているのです。

2. ホールネス(Wholeness)

ホールネスとは、人間としての“全体性”を受け入れるという考え方です。
ティール組織では、仕事中であっても自分の個性や価値観、感情を抑え込む必要はありません。

  • 自分らしさを出せることによって、安心して働ける環境がつくられる。
  • 心理的安全性が高まり、チーム内の信頼や共感が生まれやすくなる。
  • 「仕事の顔」と「プライベートの顔」を分ける必要がない。

個人の強みを活かしやすくなり、より創造的で持続可能な働き方が可能になります。

3. 進化する目的(Evolutionary Purpose)

ティール組織は、「明確なビジョンに従って一丸となって進む」組織ではありません。
むしろ、組織が持つ存在意義や目的が、状況に応じて進化していくことを重視します。

  • 組織自体を「生きた存在」ととらえ、外部環境と対話しながら進化を続ける。
  • 上から決められた計画ではなく、現場やメンバーの気づきに基づいて柔軟に方向転換する。
  • 計画通りに動くことよりも、「本質的に意味のあることをやる」ことを優先する。

このようにして、ティール組織は変化に強く、しなやかな組織を実現していきます。


ティール組織の実践がもたらす価値

ティール組織の特徴は、単なる理論にとどまりません。実際にこのモデルを取り入れることで、以下のような変化が生まれます。

  • 働く人のモチベーションやエンゲージメントの向上
  • 意思決定のスピードと質の向上
  • 変化に対して柔軟に対応できる組織体質

「管理される側」ではなく、「自ら創る側」になることで、メンバー一人ひとりが主体性を持ち、組織全体がイキイキと動き出します。

5つの組織モデルとその進化

組織の進化を「色」で捉えるフレームワーク

ティール組織を理解するうえで欠かせないのが、フレデリック・ラルー氏が提示した**「組織の進化モデル」**です。
彼は、人類の社会・意識の進化に応じて、組織の形も進化してきたとし、それを「色(カラー)」で分類しています。

この色分けは、組織の良し悪しを評価するものではなく、それぞれの組織形態が時代や目的に応じて最適であるという前提に基づいています。
それでは、それぞれの組織モデルを見ていきましょう。


レッド組織(衝動型)

キーワード:支配・恐怖・瞬間的な統率力

  • 例:マフィア、ギャング、一部の軍隊
  • 指導者の強いカリスマ性と恐怖により統制される
  • 即時対応力や強い力が必要な状況では有効

特徴:

  • 非常にトップダウン
  • 規則や制度は最小限
  • 組織の存続がリーダーの権力に依存している

アンバー組織(順応型)

キーワード:秩序・伝統・階層的安定

  • 例:官公庁、宗教団体、伝統的な大企業
  • 明確な階層構造とルールに基づき、安定性を重視
  • 組織の役割分担が固定的で、個人より全体の秩序が優先される

特徴:

  • 長期雇用や年功序列が一般的
  • 決められたプロセスを忠実に実行する
  • 変化に対しては保守的

オレンジ組織(達成型)

キーワード:成果主義・競争・イノベーション

  • 例:多くのグローバル企業、ベンチャー企業、営業組織など
  • 成果を出すことが重視され、評価・報酬に直結する
  • 科学的なマネジメント、KPI管理、PDCAサイクルが導入される

特徴:

  • 上昇志向が強く、目標達成にドライブされる
  • イノベーションを推進し、変化に積極的
  • 反面、競争やストレスによる疲弊も生まれやすい

グリーン組織(多元型)

キーワード:人間性・協調・価値観の共有

  • 例:NPO、福祉関連、従業員満足を重視する企業
  • 組織文化や人間関係を重視し、ボトムアップの意思決定を取り入れる
  • メンバーの幸福ややりがいが最優先される

特徴:

  • 合意形成を大切にする
  • フラットな組織構造
  • 目的の共有を通じてチームがまとまる
  • 反面、意思決定に時間がかかることも

ティール組織(進化型)

キーワード:自律・全体性・進化する目的

  • 例:Buurtzorg(オランダの訪問看護)、Patagonia など
  • セルフマネジメント、ホールネス、進化する目的を備えた組織
  • 組織自体が「生きている存在」として捉えられる

特徴:

  • 階層や役職にとらわれず、役割ベースで運営される
  • 個人の内面や価値観を含めて尊重される
  • 外部環境と対話しながら、柔軟に変化・進化する

各組織モデルのまとめ

組織カラーキーワード主な特徴向いている環境
レッド支配・恐怖カリスマ的リーダー混乱期・危機対応
アンバー秩序・伝統固定された階層安定重視の環境
オレンジ成果・競争KPIと評価重視成長市場・営業組織
グリーン協調・価値観フラット・合意形成人間性重視の職場
ティール自律・全体性・進化自己管理・目的に沿った柔軟性高変化環境・知的労働

なぜ今「ティール型」が求められているのか?

現代は、変化が激しく予測が難しい「VUCA時代(不確実・不安定・複雑・曖昧)」と呼ばれています。
こうした時代においては、以下のような組織が求められます。

  • 現場でスピーディーな意思決定ができる
  • 多様な人材が活躍できる
  • 柔軟に変化へ対応できる

これらを実現できるティール組織は、これからの時代に適応した新しいモデルとして、ますます注目されています。

現場主導で動く組織――柔軟性とスピードを手に入れる

トップダウン型の限界

これまで多くの組織では、経営陣が意思決定を行い、現場がその指示に従うという「トップダウン型」のスタイルが一般的でした。
この構造には一定のメリットがあり、特に安定した環境や繰り返し型の業務においては効率的に機能します。

しかし、現代のビジネス環境は日々変化しています。
予測不可能な出来事、顧客ニーズの多様化、技術革新のスピード――これらに迅速に対応するには、現場の判断を活かした柔軟な意思決定が求められます。


情報と判断を「現場」に移す

ティール組織では、意思決定の中心が現場にあることが重要なポイントです。
すべてをリーダーが決めるのではなく、現場のメンバーに情報と裁量を与えることで、次のようなメリットが生まれます。

  • 現場の状況に即した判断が可能になる
  • 意思決定のスピードが大幅に向上する
  • メンバーの主体性・責任感が高まる

これにより、組織全体としての対応力や柔軟性が大きく向上します。


リーダーの役割は「サポート」へ

トップダウン型の組織では、リーダーは「決める人」であり「指示を出す人」でした。
一方、ティール型の組織では、リーダーの役割は大きく変わります。

リーダーは「指示する人」ではなく、「環境を整え、メンバーの成長を支援する人」。

この考え方は、**サーバント・リーダーシップ(奉仕型リーダーシップ)**に近く、リーダーが前に立つというよりも、後ろから支える役割に回ります。
これにより、メンバーは「自分で決めて動いていいんだ」という安心感を持ち、自走する力を発揮しやすくなります。


固定された部署ではなく、流動的なチーム構成へ

従来の組織では、「営業部」「企画部」「開発部」など、固定的な部署で構成されることが一般的でした。
しかし、ティール型の組織では、プロジェクトや目的に応じてチームを柔軟に編成・再編成します。

  • 必要なタイミングで必要なスキルを持つ人が集まり、課題を解決する
  • チームの寿命はプロジェクト単位で変化
  • 部署の壁を越えた連携が生まれやすくなる

このように、目的ドリブンで動くチームが構成されることで、スピード感と柔軟性を両立できるようになります。


柔軟性とスピードがもたらす価値

現場主導の組織運営によって得られる最大の価値は、「変化に強くなること」です。

  • 変化に気づき、すぐに対応できる
  • 情報が滞らず、判断が早い
  • 各メンバーが主体的に動くことで、組織の活力が増す

これらは、競争の激しい現代において、非常に大きなアドバンテージとなります。

セルフマネジメントを支える仕組みと文化

セルフマネジメントとは?

ティール組織の中核を成す概念のひとつが「セルフマネジメント(自己管理)」です。
これは単に「好きなように働く」という意味ではなく、各メンバーが責任を持って判断・行動し、組織全体と連携しながら成果を出していくという考え方です。

セルフマネジメントが成立するためには、以下の3つの要素が整っていることが重要です。

  1. 情報の透明性
  2. 明確な役割と目的
  3. 安心して発言・行動できる文化(心理的安全性)

情報の透明性が信頼をつくる

自律的に動くには、「状況を正しく把握するための情報」が欠かせません。
ティール組織では、意思決定に必要な情報はできるだけオープンにし、全員がアクセスできるようにします

たとえば:

  • 財務状況の共有(売上・利益・コストなど)
  • プロジェクトの進捗や課題
  • 意思決定の背景や過程

こうした透明性があることで、メンバーは安心して判断を下すことができ、組織内の信頼関係も自然と高まります。


アドバイスプロセスの活用

セルフマネジメントを促進する仕組みとしてよく使われるのが、**アドバイスプロセス(Advice Process)**です。

これは、意思決定をする際に、必ずしも上司の承認を得る必要はないが、影響を受ける人や知見のある人に意見を聞くことを推奨するプロセスです。

アドバイスプロセスの流れ:

  1. 誰でも意思決定を提案できる
  2. 関連するメンバーや専門家にアドバイスを求める
  3. アドバイスを踏まえて、提案者が最終判断を下す

この仕組みによって、権限の集中を防ぎながら、質の高い意思決定が可能になります。


専門性を活かせるサポート体制

個人の判断には限界があるため、各分野の専門家が身近にいて、相談できる環境を整えることも重要です。

たとえば:

  • 財務に詳しいメンバーが、投資判断や予算配分の相談に乗る
  • マーケティング担当が、集客やブランディングのアドバイスをする
  • ITに強いメンバーが、ツール選定やシステム導入を支援する

このような**「横のつながり」を活かした知識共有の仕組み**があることで、各メンバーの判断がより確かなものになります。


心理的安全性のある環境づくり

セルフマネジメントを成功させるには、失敗を恐れずに行動できる環境も不可欠です。

心理的安全性が高い組織では:

  • 自分の意見を安心して言える
  • ミスを責めず、学びととらえる文化がある
  • 上下関係に関係なく、建設的なフィードバックができる

このような職場環境が整うことで、メンバーの主体性や創造性が自然と引き出されるようになります。


「自由」と「ルール」のバランス

自由に動けることは大切ですが、完全な自由放任では組織は機能しません。
ティール組織では、「最低限のルールと枠組み」を設けたうえで、その中で自由に考え、行動することを推奨します。

  • 共通のビジョンや目的の明確化
  • 判断に迷ったときのガイドラインの整備
  • メンバー間で合意された行動規範の共有

これにより、個々が自由に動いても、組織としての一貫性と信頼感が保たれるのです。

自律型組織に必要な「自由」と「ルール」のバランス

自由なだけではうまくいかない

ティール組織をはじめとする自律型の組織は、「自由に働ける」というイメージを持たれることが多いですが、自由だけでは組織はうまく機能しません

なぜなら、明確なルールや共有された価値観がなければ、それぞれのメンバーが異なる方向へ向かってしまい、協働が成立しなくなるからです。

重要なのは、「自律のための土台」を整えること。
それは、必要最低限のルール共通の前提認識を持ちつつ、その中で個人が最大限の自由を発揮できる環境をつくることにあります。


自律を支える「共通の軸」と「目的の共有」

個々の判断や行動がバラバラにならないためには、組織としての目的や価値観が明確であることが必要です。

  • 私たちはなぜ存在しているのか(存在意義)
  • どんな価値を社会に提供するのか(使命・ビジョン)
  • どのような行動が理想的なのか(バリュー)

これらを全員が共有していれば、仮にルールが少なくても、同じ方向に向かって自由に動ける組織になります。


ルールは「縛るもの」ではなく「支えるもの」

ルールというと、自由を制限するものと思われがちですが、自律型組織においては**「迷ったときの判断基準」や「共通認識の土台」**としての役割があります。

たとえば:

  • 意思決定のプロセス(例:アドバイスプロセス)
  • プロジェクトの立ち上げ・解散のルール
  • フィードバックや振り返りの仕組み

これらは、**メンバーが自信を持って行動するための「支え」**になります。
結果として、組織の安定性とスピードの両立が可能になるのです。


チャレンジを許容する文化づくり

自律型組織では、メンバーが自ら考えて行動することが求められますが、その過程での失敗や試行錯誤も自然なプロセスとして受け入れる必要があります。

  • 失敗を責めず、学びとして共有する
  • 「やってみる」ことが歓迎される雰囲気
  • フィードバックを前向きに受け取る風土

このような文化があることで、メンバーは安心して新しいアイデアに挑戦し、組織全体が進化していく土壌が育まれます。


成長と自己実現を支援する組織へ

自律的に働くには、それを支える学びと成長の機会が欠かせません。
ティール組織では、単なる業務スキルだけでなく、個人の自己実現や内面的な成長も大切にされます

  • 学びの場やフィードバック文化の整備
  • コーチングやメンタリングの導入
  • 働く人の価値観やライフスタイルに寄り添う姿勢

これにより、メンバー一人ひとりが**「自分らしく生きながら、仕事に力を注げる」**状態が実現されていきます。


肩書きや立場に縛られない「対等な関係」

最後に、自律型組織では**上下関係よりも「対等な関係性」**が重視されます。

  • 意見を言うのに役職は関係ない
  • 若手や新入りでも意思決定に関われる
  • お互いを尊重し合う文化がある

こうしたフラットな関係が、心理的安全性の高い職場環境をつくり、組織全体に信頼と連帯感をもたらします。

新しい組織が実現する働き方と未来への展望

自律と信頼のもとに成り立つ組織

ここまで紹介してきた新しい組織モデル、特にティール組織の考え方には、共通して次のような価値観があります。

  • 個人を尊重すること(ホールネス)
  • 自律的に動ける環境(セルフマネジメント)
  • 変化と共に進化する柔軟性(進化する目的)
  • 情報の透明性による信頼の形成
  • 肩書きにとらわれないフラットな関係性

これらはすべて、「信頼」によって支えられています
リーダーがメンバーを信じ、メンバー同士も互いに信頼し合うことで、組織は管理に頼らずとも機能し、むしろそのほうが速く、しなやかに、そして創造的に動けるのです。


一人ひとりが「自分らしく働ける」未来へ

これまでのように、組織に自分を合わせるのではなく、組織が個人を活かすという考え方が、今後の働き方の主流となっていくでしょう。

  • 仕事とプライベートを切り離すのではなく、人生の一部として自然に結びついている
  • 得意なことや関心のある領域に集中できる環境
  • 年齢・立場・肩書きにとらわれず、フラットに意見を交わせる風土

こうした環境が整えば、メンバー一人ひとりが本当の意味で「自分らしく働く」ことが可能になります
そして、それは結果的に組織全体のパフォーマンスや創造性の向上にもつながります。


組織の進化は、一歩ずつ

もちろん、ティール型のような理想的な組織をいきなり実現するのは難しいこともあります。
特に、従来のピラミッド型構造や強い上下関係が根付いた組織では、文化の変革には時間と粘り強さが必要です。

重要なのは、完璧を目指すのではなく、できるところから一歩ずつ試すことです。

  • 一部のチームだけで試験的にセルフマネジメントを導入する
  • アドバイスプロセスを一つの判断フローとして使ってみる
  • 情報共有の範囲を少し広げてみる

小さな変化の積み重ねが、やがて組織全体の進化につながっていきます。


新しい組織のかたちは、一人ひとりの挑戦から

新しい組織の実現には、組織全体の仕組みだけでなく、働く一人ひとりの意識や行動も大きな影響を持っています。

  • 他者の可能性を信じ、任せる
  • 自分の意見を正直に伝え、行動する
  • 相手の違いを受け入れ、尊重する

このような姿勢を持つメンバーが増えることで、自然と組織は「より良くなる力」を内側から育んでいきます。


おわりに

新しい組織とは、管理をなくすことではなく、信頼のもとに個人が活きる環境をつくることです。
ティール組織をはじめとする新たな組織モデルには、これからの時代を生きるヒントが詰まっています。

変化が激しく、不確実性の高い時代だからこそ、組織のあり方を見直すことは非常に重要です。
自分たちの組織にとって何が必要で、何が不要なのか。
一人ひとりが考え、行動し、成長していける――そんな組織が、これからの未来を切り開いていくのではないでしょうか。

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